No.29

Name:ルーク・モーリー Luke Morley
Title: エル・グリンゴ・レトロ El Gringo Retro
Label: 東芝EMI
Number: TOCP-65673

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 少なくとも僕にとって、2001年二月発売の本作以降の二年半の間に出た新譜で、これ以上のものは無い。勿論、今迄当コーナーで紹介した作品も含めて気に入っているものは多いが、本作以上では、正直な話、無い。
 特に、古くからのブリティッシュ・ロック(「ブリット」なんぞと縮めちまわない類のね)がお好きな方には強くお薦めする。

 ルーク・モーリーがリーダー/ソングライター/ギターリストとして90年代を過ごしたバンド、サンダーは、曲のクォリティ、歌唱力、演奏力、ユーモア・センス、そのどれもが素晴らしかった。バンド名以外は文句の付けようの無いバンドだった(笑)。
 平たく言ってしまえば、彼等は70年代に花開き(そして同時にある意味で完結した)ブリティッシュ・ロックの正統的な継承者であった。ヴォーカリストは「本当は僕はポール・ロジャーズになりたかったんだけど、もうポール・ロジャーズがポール・ロジャーズだったんだ」という名(迷)言を残している。ザ・フー以降、ユニオン・ジャックの最も似合うバンドだった。なのに、アメリカは兎も角、本国大英帝国(!)にも彼等を受け入れる土壌が無かったのは、本当に不運だった。実際、「味方が音楽シーンに居ない為、バンドを維持するのが大変だ」という理由で彼等は解散してしまったというのだ。こんなに悲しい解散は無い。
 ちなみに、その「土壌」側の用意が整ったらしく、サンダーは昨年めでたく再結成を果たしている(一時的という話も有るが)。その再結成アルバム『シューティング・アット・ザ・サン』も好作だ。


 さて、『エル・グリンゴ・レトロ』である。
 本作で披露されているのは、サンダー以上にストレイトな
「アメリカ南部発祥の黒人大衆音楽に強く憧れる英国白人による、小粋で何処か調子っ外れな酔っ払いロックン・ロール」
―つまり正しいブリティッシュ・ロックである。
 アルバム・タイトルからして、メキシコ人が北米の白人を少々茶化して呼ぶ際に使用するらしい「グリンゴ」(リトル・フィートでこういう曲が有りましたね)と、「レトロ」。それを自分で付けちゃうんだから、まぁ何をか謂はんや。
 「ザ・懐古趣味な白ン坊ちゃん」といった所か。

 一曲一曲に就いて言及しようとするとキリが無い。好きな音楽色々有れど、特に前述の「正しいブリティッシュ・ロック」が大好きな僕のツボ直撃の名曲群なのだ。
 先ず、発売前にラジオで「ラヴィング・ユー(イズ・オール・アイ・キャン・ドゥ)」を聴いた。アル・グリーンに曲を提供する話が来た際に作った曲だそうで(結局その話は流れた)、よってモロにアル・グリーン・スタイルの曲。この一曲で僕は本作が傑作であると確信し、そして実際その通りだった。
 サンダー時代にも有った彼のソウル/ファンク色、特にジ・アイズリー・ブラザーズを意識した二曲には御丁寧に「(パーツ1&2)」の表記が(何て判り易いんだルーク!)。一曲は「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」、もう一曲は「スピル・ザ・ワイン」(オリジナルはウォー)の影響が特に強い。

 ほぉら、キリが無い。
 以下、強引な省略として、
中期ザ・ビートルズ(まだバンド・サウンドの頃の、という意味で)、ハンブル・パイ、フェイセズ、ロッド・ステワート、ザ・ローリング・ストーンズ、ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド、サンターナ、初期のレニー・クラヴィッツ、
そして何と言っても、ロン・ウッドのソロ・ワーク。
―等といった名前にピンと来たのであれば、このアルバムは「大当たり」な筈です。個人的にはザ・ブラック・クロウズのセカンド(92年)以来の感動的なロックだった。


 さて、彼(等)の不運を代表すつものに、「『ハード・ロック/へヴィ・メタル』のジャンルに入れられてしまっている」という事が有る。上記のリストから察して頂けると有難いのだけれど、サンダーは「ハード・ロック『も』演るバンド」でしかない。しかも流れとしてはフリー〜ハンブル・パイ〜バッド・カンパニー〜デイヴィッド・カヴァーデイルというそれであり、HR/HMの王道と言えるディープ・パープル(イアン・ギラン)〜ジューダズ・プリースト〜アイアン・メイデン〜ジャーマン・メタル及び北欧メタルといった流れは全く汲んでいない。よってメタル界で大受けするとは考えにくい。これはリスナー側というよりむしろ提供側=マーケティングの問題であろう。提供側のいちメディアであるラジオ番組を持つ人間として、彼(等)を広く「ロック」として紹介したいと思う次第だ。「何でへヴィ・メタル村でしか話題にならんのだ?!」という問題提起を込めつつ。

 だってこんなに良いんだもの!