2024-11-28 木

SSF Explorer 第35回 11月28日OA

池子の森自然公園での昆虫調査について、池子の森自然調査委員会会員で、三浦半島昆虫研究会の中村進一さんにお話を伺いました。

◆池子の森では今迄に何回位調査を行っているのですか?

この公園での昆虫調査は三浦半島昆虫研究会(以後=三昆研)により、2006年~2012年の約7年間と2017年~2019年の約2年間の2回の調査を行っています。

最初の2006年からの調査には中村さんはオブザーバーとして参加はしていましたが、本格的な調査は他の会員の方々によって成されました。その報告が「かまくらちょう」No.89三浦半島の米海軍施設 昆虫調査報告書 – (三浦半島米海軍施設昆虫調査団・三昆研,2016) として発刊されています。

 その米海軍施設内の4ヶ所で施設内昆虫調査が行われ、その中の1つが池子の森自然公園でした。その名の通り逗子市が米軍より委譲され自然の環境が残る公園として整備して、逗子市緑政課から三昆研に調査依頼を受けたのが20177月からでした (未発表)

また、「かまくらちょう」No.93号に当会々員の小口岳史氏による(20163/2020173/19までの期間の個人的な調査をした) 昆虫類の1部の調査報告があります。

最初の調査(以後、=2016年~の調査を: 前調査) は同じ「池子の森」と言いながら調査エリアは、広く例えば、横浜市金沢区六浦5丁目側の境に沿っての地域が含まれ、また現在の米軍住宅地内も含まれていて、2017年からの2回目調査では入域禁止区域となった所まで探索が出来ました。結果として、昆虫相に大きな違いは見い出せなかったのですが、その種の成虫での確認が出来なかったり、種によっては、その個体数が極端に少なかったりと変動があったそうです。

池子の森自然公園の昆虫全般は分類別に18202993種を記録しました(前調査)

◆お名前が出てくる小口さんとはどのような方なのでしょうか?

小口岳史さんは大学教授で、昆虫全般に精通をしており、特にトンボ、直翅類(バッタ、カマキリ等々)、半翅類(カメムシ、セミ、アメンボ等々)、さらには水生昆虫類まで広い知識の持ち主で、調査に参加された事が調査に関しても大きかったそうです。

 その彼が2)はご本人による調査で、3)の調査へは参加をして頂いたが、1)の調査は残念ながら参加をされていない。そのため、種類の同定、分別の判断に迷いがあり、同定が着かずカウントされていない種の可能性もあったそうです。

今日は、その中のチョウ類についてお話しいただきました。

神奈川県で記録された種類数は147種で実質の生息数は110種弱と思われるそうです。

三浦半島で半島では記録された種類数は84種。実質の生息数は60(58)種と考えられ、

池子の森自然公園では53種。実質の生息数52種の確認を得たそうです。

一般的には「自然公園」と称する1地域での種類は40弱ですので、「池子」は自然環境に恵まれている事を物語る調査結果となりました。と中村さん。

前調査の「池子の森」ではチョウ類49種が確認されていて、2017-2019年間の調査結果(未発表)では、53種が確認出来ました。4種類の種が増えたことになりますが、実はこれは両手を挙げて喜べません。

それらの4種の11つには確認出来た大まかな理由があるからです。

◆どんな理由でしょう?

まず1つは、本来この地域に生息はしていない個体が何らかの理由で (迷って=迷蝶と言う)調査中に目撃をされたモノ。もう1つはその種の本来の活動時間が調査時間と合わないモノ。そして、もう1つは普遍的で拡散の習性があるために調査時に巡り合うタイミングを逸してしまったモノ。そして最後にもう1つ、現在はその種の生息環境が急速に狭められているモノ、と考えられています。

これらは、たまたま数的には増えましたが、現状では、近年どのチョウ類も「かつて」ほどの繁栄はなく、調査をしている中では種類によってカウントをしていますが生息状況には厳しいモノがあります。

先にも述べた通り調査エリアの縮小と環境の小さな変化(悪化=近年の強い風雨により倒木や土砂崩れ等々)により、在来として生息している()チョウたちが種類こそ確認はされていますが、その個体数を減じている傾向は否めず、現在に至っていると推測されます。

◆環境悪化とはどんな事があげられますか?

 環境悪化の1つの例として、ごく最近に起きた「ナラ枯れ」による減少傾向で、その影響を強く受けていると考えられるのがシジミチョウ科の中の平地産ゼフィルス (アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、オオミドリシジミ) と言われる種類で、この「ナラ枯れ」の被害後、殆ど池子の森では見られなくなっています。

 逆に、三浦半島全体では衰退や減少をしている種が、この池子の森自然公園では発生を続けている種もあるので、この公園の存在は昆虫面からみても貴重で大切な地であると思います。

◆最後にリスナーさんへのメッセージをお聞かせください。

人との共存を行政側も考えなければなりませんので、例えば、人が利用する道端に木屑や枯れ草があると、それは排除したいと思うのは当然ですが、その木屑や枯れ草などは、公園外に排除せず、公園の一角に移動して、そのエリアは「自然のまま」の状態にしておくことの工夫をする等、単に「見た目」が悪いからとか、異臭がするとかだけで排除、撤去することなく、「知恵」を出し合って池子の森自然公園の「自然」を大切にして、上手に付き合って行きたいと願います。

この様にする事によって、昆虫は生きていけるのです。

生きているのは人間だけでは有りません。池子の森の生態を守っていくためには色々な工夫が必要ですね。

中村さんの昆虫に対する熱い思いが伝わるお話でした。