2019-6-18 火

SHONAN BEACH FM MAGAZINE Vol.54

三菱自動車 Shonan BeachDriving Emode

 ブランド誕生から50年を迎えたデリカ。歴代デリカを一言でいうと、「唯一無二のクルマ」だ。広大な室内スペースは遊び道具を満載しても快適な居住空間を確保。本格的な4WDシステムとトルクフルなドライブトレーンが荒れ地の超低速から高速巡行までを余裕でこなす。高い着座位置は長距離移動の疲労を最小限に抑えるうえに、適度なボディサイズで街中の取り回しも良好。結果、長く愛されるクルマになる。地方の道の駅に行くと、昭和から現代に至るまでの様々なデリカを目にすることができる。そのいずれもがオーナーの愛情をたっぷり注がれ、生き生きと輝いている。実は私の父も20年・30万キロにわたって、先々代に当たるデリカスペースギアを所有してきた。愛犬とともに全国各地を旅したほか、毎日の通勤に、息子(私)の度重なる引っ越しにと大活躍して天寿を全うした。我が家の20年はデリカとともにあったのだ。自動車の長い歴史において、これほどまでにユーザーの信頼を勝ち取ってきたブランドはごくわずか。モデルチェンジには否が応でも期待が高まる。

 さっそく新型デリカD:5を見ていこう。迫力あるフロントフェイスに目を奪われがちだが、これは奇をてらったものではなく、実に理にかなっているのだ。正面からはアルファベットの「X」状に広がるグリル(「ダイナミックシールド」と呼ばれる三菱のデザインコンセプト)の上方に伸びるのは意外にもポジションランプ。薄型のLEDランプを使い豊かな表情を演出するのは世界的なトレンド。ヘッドライトはその下のコーナー部に縦方向に広がる(これもLED)。前走車のバックミラーからは眩しさを感じることなく、しかも抜群の存在感を誇る。そして「X」状のグリルは、その奥に存在するクリーンディーゼルエンジンの高性能を予感させ、タフで機能的なボディ全体に漲らせる。エンジンの存在感が希薄になった最近の自動車において、メーカーのこだわりと自信が感じられるポイントだ。何よりも論理に基づいた形は、時を経ても色あせることがない。今回も長く付き合えるデザインで登場したことで、歴代デリカのファンもほっと胸をなでおろしたことだろう。

 

 旅するミニバンのパワーユニットには、ディーゼルエンジンこそふさわしい。その粘り強い走りや経済性を一度でも体験すると、もう元には戻れないはずだ。令和元年現在、日本国内で入手できる上級ミニバンでディーゼルエンジンを搭載しているのはデリカD:5のみ。これだけで十分な購入動機になるだろう。一方でディーゼルに否定的なひとがいるのも事実。ガラガラと音がうるさい、ブルブルと振動が大きい、アクセルレスポンスが悪い、黒煙をまき散らし環境負荷が大きい、といった意見だ。ところが新型デリカD:5のクリーンディーゼルにおいて、このようにネガティブな要素は無視していい。スポーツカーのような鋭さとは違うが、アクセルを踏んだ分だけ、自由自在にパワーを引き出すことができる。高性能との両立が難しい環境性能は、新たに「尿素SCRシステム」を搭載して2022年から施行される排ガス規制をクリアした。新開発の8ATとのマッチングの良さも特筆もの。サスペンションも洗練を増し、オフロードでの頼もしさはそのままに舗装路では静かで滑らかな乗り心地を手に入れた。インテリアも上質だ。今や新型車では必須となった予防安全技術もフル装備。衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報、レーダークルーズコントロール、オートマチックハイビームを備え最先端の水準だ。デリカならではの魅力はそのままに「洗練」と「最先端」を手に入れた新型デリカD:5SUVとしてもミニバンとしても、もはや死角は見当たらない。

 

SMIZUTANI