2024-2-27 火
「芥川龍之介と美の世界」企画展担当学芸員の橋口由依さん
神奈川県立近代美術館葉山では ただいま企画展「芥川龍之介と美の世界 二人の先達―夏目漱石、菅 虎雄」が 開催中です。 企画展担当学芸員の橋口由依さんをゲストにお迎えしました。
「羅生門」「鼻」「蜘蛛の糸」をはじめとする数々の名作を世に送り出し、今もなお幅広い世代に愛される小説家・芥川龍之介(1892–1927)。芥川は作品や書簡等においてしばしば美術に言及し、その文学と美術への関心の高さは、彼が師と仰いだ夏目漱石(1867–1916)と共通しています。一方、菅虎雄(1864–1943)は、芥川の第一高等学校時代のドイツ語の教師であるとともに、漱石を禅に導いた人物でした。本展では、芥川の遺稿である「或阿呆の一生」を冒頭に、芥川、漱石、菅の三人の交流関係に着目しながら、古今東西の芸術に関心を寄せ、自らの文学世界にもそれらを取り込んだ芥川龍之介とその眼を通した美の世界を紹介します。
展覧会のみどころ
1.文豪たちの直筆原稿類漱石、芥川の初版本のほか、彼らの直筆原稿や、漱石、菅、芥川がやり取りした手紙などの貴重な資料を全国各地の文学館の協力により展示します。
2. 芥川と漱石を結ぶ菅虎雄という存在夏目漱石の友人であり、第一高等学校の名物教師として芥川にドイツ語を教え、また、書家でもあった菅虎雄。芥川が初めて出版した『羅生門』の題字は菅によるものでした。鎌倉に長く暮らし、多くの文士と交流した菅の書家としての側面にも焦点をあてます。
3.芥川が愛した芸術世界芥川は機会をとらえて美術鑑賞や観劇に出かけました。古今東西の芸術に幅広く関心を寄せた芥川の美意識を刺激した美術作品を紹介します。
会場は5章分かれて展示。2期は3月12日から展示替え。たくさん見どころがある中 芥川が実際にみた作品、オディロン・ルドン《若き日の仏陀》1905年油彩・カンヴァス(京都国立近代美術館所蔵) がお勧めです。
関連企画 「河童三昧」もお楽しみください!クイズラリー形式で館内にひそむ河童たちを見つけた方に、芥川が描いた河童にちなんだオリジナルステッカーをプレゼントします。
4月7日(日)まで開催中!
講演会は3月30日(土)午後2時~4時 葉山館講堂にて 話し手 水沢館長 参加無料
3月24日(日)予定
ほか関連イベントは美術館ウェブサイトをご確認ください。
なお同時開催 コレクション展は「木茂(もくも)先生と負翼童子」
自らを書痴と称し、愛書家にして愛煙家であった“木茂(もくも)先生”こと美術史家・青木茂(1932–2021)。幕末明治の洋画家・高橋由一研究の第一人者として長年にわたる研究を重ねた青木が蒐め、当館に譲られた蔵書「青木文庫」は1万冊に及びます。今後の美術史研究に大きな遺産となる「青木文庫」から明治期の貴重な資料を紹介するほか、青木の調査によって明らかとなった2019年度収蔵の高橋由一旧蔵作品《負翼童子図》(作者不詳)を修復後初公開します。